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やじるし永田町発 わたしの視点 「少子化問題の本質」
 

 松下政経塾での在塾期間中、女性は私ひとりだけだった。厳しい環境だったが、さまざまな問題意識を育むにはよかったと思う。その中で、とりわけ興味を持ったのが女性のライフステージの変化である。
 
  1989年以降、出生率は低下し続けている。この原因を女性の社会進出、ひいては男女共同参画に求める人がいたが、私にはそうは思えなかった。女性のわがままと片付けてしまうことが余りにも早計に思えた以上に、そもそも男女共同参画がまだ実現していない段階で、そこに原因を求めるのは背理である。
 
  未婚化・晩婚化の進行や中絶件数の減少、さらには予定子供数がほぼ横ばい、といった現状の下、「若い女性は現実の厳しさを前提に、その現実に対応するため子供を産まないという手段を採っている」と考えた。
 
  例えば、家庭・育児と仕事が相反する場合、男性には「妻に任せる」という選択ができても、女性には事実上できない。すなわち、働いている女性にとっては、家事・育児が一方的な負担になっているのである。
 
  2000年の男女共同参画白書によれば、30代で女性の家事・育児の時間が平日5時間37分に対し、男性は24分でしかない。これは男性の家事・育児の内容にお茶くみから新聞の受け取り、ごみ出しまで含んだ数字である。にもかかわらずこれだけ大きな差となる。
 
  男女平等といわれながらも、家の外で男性と同等に働き、さらに家庭で完璧に働くことを求められたのではたまらない。事実、出産前には約70%の女性が職に就いているが、出産後にはその内の約70%の女性が離職している。つまり、2000年厚生労働省の調査から、全女性の約半数が出産後には職から離れるというデータを読み取れるのである。
 
  また、政経塾でのインタビューやアンケートの結果も、厚生労働省や内閣府などの調査の結果を裏付けるものであった。
 
  2003年12月には、韓国女性省を視察。国会議員のクオーター制を求める政党関係者のデモ行動などにも参加した。そこで儒教の国、韓国がいつしか男女共同参画という点で、日本より進んでいることに衝撃を受けた。男女共同参画は少子化の要因ではない。(1)家事・育児への社会的評価の不在(2)再就職の困難さ(3)パート・アルバイトに対する低評価―の3つの要因で晩婚化・未婚化が進み、結果として少子化を助長していると結論付けるに至った。
 
  猪口邦子氏が男女共同参画相に就任する以前、少子化の要因として男女共同参画をやり玉に挙げ、過激なジェンダーフリー教育と関連付けて感情的に反対する人も多かった。そんな時、保育実習の経験を思い出した。それは、愛情と充実感と重労働が交錯した時間だった。実習に終わりはあっても、子育てはそれからも続く。子育てと日々の暮らしで精いっぱいの女性の声を、私なら代わりに届けることができる。私なら謙虚に耳を傾けることができる。それが私のライフワークなのだと。
 
  韓国の例を挙げるまでもなく、男性社会という言い訳はもはや通用しない時代になっているのだ。女性の声は「わがまま」ではなく、「今まで届かなかった切実な要望」だったのである。今まで出会ったさまざまな女性の方々の声を踏まえ、それらを国政に反映し、今後の少子化対策にも生かすために、これからも現地現場主義をモットーに国政に取り組みたい。

(フジサンケイビジネスアイ2006年2月2日付)