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先日、衆院予算委員会第五分科会で質間の機会を得た。雇用機会均等法の間接差別の限定項目のことや、医療制度改革における療養病床の廃止・再編に対する患者本位の施策、さらに産科の医師不足と病棟閉鎖が問題になる中での今後の産科医療に対するビジョンを質問した。私は国家百年の計に基づいて、大きな視点で日本という国家・国民のことを考える一方で、常に市民の目線で政治をとらえたいと思っている。そうしたこともあって統計を重視している。 ある年金の勉強会で議論中、受給額の日本と世界の格差についての公的機関の資料をもとに、日本はスウェーデンなどの北欧諸国と比べても高額受給だと見解を示すと、「日本の統計は厚生年金をもとにしているからで、その統計資料そのものが不適切である」と反論された経験がある。 「『制度』のないところに救われない人がいる」を痛感し、統計のあり方そのものにも疑問を感じることもあるのだが、やはり客観的な数値で明示しうる統計というものは、分かりやすい根拠であることに変わりはない。 産科の医師の減少、新入局医の指導医の不足、あるいは病棟閉鎖や分娩取りやめが起きている現状など、さまざまな質問項目を作成しようとしたが、実際に取り組んでみると統計資料の数が非常に少なかったのが意外だった。 産科医療は壮大なビジョンに基づき、地域の中核病院でハイリスク出産に備える一方で、地域の診療所や医院と連携を密にし、検診や診察はそちらで行うとともに、いわゆる「オープンシステム」の導入も視野に入れて検討されている。 もちろん厚生労働省も雇用均等・児童家庭局母子保険課において「小児科、産婦人科若手医師の確保・育成に関する研究」報告書をまとめてはいる。しかし、実は多くの施域では中核病院そのものが、医師不足で病棟閉鎖の危機にさらされているのに、それを裏付ける統計資料はほとんどない。 医療制度改革においても厳しく見直した場合、療養病床における医療を不可欠とする人はおおよそ現状の半数であるというデータに基づいて、改革案が作られつつある。医療型の療養型病床から介護老人保健施設、ケアハウス、グループホームや在宅への移行による補完が想定されているが、そこでの入所規定には「身の回りの世話を自分でできる」という項目が要件として入っていることが多い。 また都市部において寝たきりの人の在宅介護をすることは、賃貸住宅のバリアフリー化の難しさや、今後の「老老介護」、単独所帯の増加を考えると、非常に困難だと言わざるを得ない。これから団塊の世代が高齢者になって医療を必要とする人が質、量ともに大幅に増えると予想されるのに、医療適用が三十八万床から十五万床に減るのでは、正直な所、現実に対応しきれるのかどうか不安が残る。厚生労働関係の歳出は減っても、高齢者虐待や無理心中・孤独死という社会問題が起こる可能性も拭いきれない。 公債残高約五百四十一兆八千億円、今年度の一般会計総額約七十九兆七千億円のうち社会保障関係費が実に25・8%を占める。この数字は、日本という国家の財政の逼追をわかりやすく訴えているが、「制度」のないところでは実態を反映したデータはなかなか得られない。一例として、二ート・フリーターは約四百万人といわれるが、その数字の中でも「家事手伝いを含めて就業・通学していない人」は八十五万人、「非正規就業者」はそのうち約二百万人であり、必要な対策はそれぞれ異なるはずである。私は、統計資料一つを見る場合であっても、市民の代表として、常に実際の生活をイメージしながら見ることを念頭に置きたいと思っている。 (フジサンケイビジネスアイ2006年3月16日付) |