川条しか公式サイト LOVE&PEACE http://www.kawajo.com/

やじるし永田町発 わたしの視点 「産科医の過酷な現状」
 

 「産科医が足りない」。小児科医の不足とともに、こんな悲鳴が各地の病院で上がっているのをご存じだろうか。実際に東京都の中核病院ですら、病棟の閉鎖が検討されている。助教授クラスの当直は当然で、ある大学病院では、教授が当直に当たっているところもあると聞く。

 新入局者は臨床研修制度の変更により、大幅な減少がささやかれている。たとえば今年一月から二月に実施された日本産科婦人科学会の調査では、全国八十一大学の産科婦人科の新入局者数は、臨床研修制度発足前の年間約三百五十人から、約二百十人と四割減を示している。

 神奈川県でも、二〇〇六年に新研修医制度の修了者のうち、産婦人科専攻者はこれまでの二十−三十人から大幅に減少して、十人になる予定だそうだ。臨床研修で各科の実習を行った結果、産科希望者があまりの過重勤務に他科希望に変更したケースも多いという。

 産婦人科、特に産科の医師不足は慢性的なものである。二〇〇〇年を過ぎたころから、特に施方の中核病院の産科病棟の閉鎖などは、単発的に報じられてはいた。

 しかし、新研修医制度で二年間産科の医局に新入局者がなかったことと、産婦人科の入局希望者がその新研修医制度で各科の研修を終えて過剰勤務実態を知り入局を辞退したこと、さらに先日の福島県での県立病院の死亡事故での一人勤務産科医の逮捕などにより、問題が一気に顕在化したという印象を受ける。

厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査のなかの医療施設従事医師数の年次推移によれば、一九九〇年から二〇〇四年の間に医師総数は約四万人増加している。この状況の中で産婦人科は一万千七百四十六人から、一万五百五十五人に約九百人も減少している。

 特に産科だけを取れば、この十四年間で千百七十四人から、七百二十七人へと約四割も減っているのである。

 厚生労働委員会の参考人の意見陳述で明らかになった、勤務状況は非常に過酷なものであった。一日七、八件もの分娩を行う。この中には、緊急手術からハイリスクな分娩まで含まれ、常に医師は患者の生命を左右する判断を迫られる。三人勤務体制であれば、三日のうち二日は当直であるが、お産は昼夜の別なく行われるので、夜間の緊急入院も分娩もあり、当直というより夜間勤務である。

 このような過酷な環境に耐えかねて、離脱する医師が出れば、分娩施設が閉鎖になってしまう。結果、残った分娩施設に妊婦さんが殺到し、その施設に勤務する産科医の病院勤務がさらに過酷なものになる。

 この現状を踏まえて抜本的な対策を打ち出さない限り、産科医不足を解決することはできないだろう。そのあり方などは改めて説明したい。

(フジサンケイビジネスアイ2006年4月27日付)