最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をよく耳にするようになった。
そもそも男性が過剰労働である実態を改め、家庭と仕事の調和を考えながら、労働について見直そうという考え方である。
この概念は、本来的には性別を問わず働き方全般にかかわる問題であるから、労働基準法で手当てをすべき問題である。
また、私自身の持論でもあるのだが、国政において生活というものを視野に入れるならば、無償労働について考える必要があると思っている。
家事労働のように賃金の払われない、いわゆるアンペイド・ワークは、介護保険導入に際して、「介護」という一部分が算定基準に入った以外、特に数字として評価を算定されることなく、残された部分である。
アンペイド・ワークは、戦前の家父長制の下では、性別役割分業に基づいて「感謝」とか「家庭内での意思決定への影響力」という形で評価されていた。
しかし、戦後の家父長制崩壊、核家族化、個人重視という家族形態の変化によって、このような無形の評価すらされなくなっている。
やや古い統計になるが、年代・男女別の平均賃金と労働時間から、1996年のアンペイド・ワークを金額に換算すると、116兆円になるという。
これはGDP(国民総生産)の23%に相当する。現状では女性の平均賃金が安いため、評価額は少なく見積もられている側面があり、算定によっては今後、増える可能性がある。
日本は自由と平等の国である。また、多様な生き方を支援する施策を推進している。
その多様な生き方に即した新たな算定基準が必要である。男女ともに働いたことが公正に評価され、子育てを支える政策を遂行するためにも、それぞれの事例に個別的に対応するだけでは不十分である。アンペイド・ワークの算定などを含めて総合的な取り組みが必要と考えている。
アンペイド・ワークについては、まだまだ一般には知られていない。
この概念とそれを評価する発想については、より多くの人に関心を持ってもらえるよう努力していきたいと思っている。
(フジサンケイビジネスアイ2006年7月20日付)