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やじるし永田町発 わたしの視点 「伝統語り海外友好を」
 

 私の選挙区は大阪2区。大阪市阿倍野区、東住吉区、平野区という大阪市の最南端に位置する地域である。その中でも平野区の中央部に位置する平野地区は、古い家々と多数の神社.仏閣が併存する町並みが残り、地域の特性を生かして魅力ある住宅地を形成する「ホープゾーン」に指定され、保存が図られている。

 その平野地区で300年の伝統を誇っているのが、大阪市内で最大のだんじり祭りでもある「平野郷夏祭り」。平野区内を9台のだんじりが縦横無尽に駆け巡る様は、"陸の天神祭り"といってもいいほどである。

 しかし、平野郷夏祭りのすぱらしさはこれに尽きない。祭りは神に豊かな実りに対する感謝、無痛息災などを祈る神事であるという、古来からの理念をも継承しているのである。また、子供も見よう見まねでだんじり祭りを行う。小さなだんじりではあるが、前後に引き回し、回転させ、掛け声も大人と同じである。「隣は何をする人ぞ」という大都会のなかで、この地域には厳然とした縦社会が息づいている。祭りという「神への祈り」を通じて、子どものころから長老を敬い、地域杜会に無意識のうちに参加する習慣ができていくのである。

 また、みこしの由来を聞き、だんじりの休息所となっている長光寺や大念仏寺の由来を知ることによって、地域の歴史や地位的な役割、そして日本の神話や神仏習合という伝統を知り、日本というアイデンティティーを作り上げていくことにもつながるのである。

 しかし、この祭りも順風満帆に300年の歴史を築いてきたわけではない。自動車社会の発展で、だんじり曳航の地域が限定され、祭りの規模の縮小を余儀なくされることも多かった。そうした中でも、今日に至るまで古き良き物を残し、時代に合うように改革を重ねたという。

 今、地域単位の街づくりが見直されている。「平野郷夏祭り」に参加する各町では、犯罪発生率や引きこもり件数が他の地域より低いと言われる。安全安心の街づくり、「家庭-学校-地域」の3者連携による教育の実現という側面が垣間見えてくる。

 日本古来の歴史の継承については、さまざまな面でアジア諸国を中心にアレルギー反応とも取れる反発にあっているものの、実際に伝統行事に基づく説明をすることで、より友好的に理解されるのではないかと思われる。

(フジサンケイビジネスアイ2006年10月26日付)