■ 人ロ減少時代の少子化対策
先の通常国会で男女雇用機会均等法の改正が成立した。今回の改正では、(一)性別による差別禁止の範囲が拡大され、すなわち@女性だけではなく男女双方に対する差別が禁止され、A差別的取り扱いを禁止するステージが明確化・追加され、B身長・体重の条件など実質的に性差別につながりうる間接差別が禁止(ただし3点に限定)された。
また、(二)妊娠・出産による不利益取り扱いの禁止や妊娠中および産後1年以内の解雇の無効が明記された。さらに、(三)セクハラ対策として管理、雇用上のとるべき措置が義務化され、(四)セクハラや母性保護管理措置についても企業名の公表の対象とされた。
私自身も厚生労働委員会の審議において質問に立ち、従来、男女雇用機会均等政策研究会において検討されてきた間接差別の七つの事例が、省令で指定される三事項に限定されたという点について、不十分ではないかという認識のもと見直しの可能性について尋ね、可能性を示唆する回答を得られた。
私の志は、「女性が安心して子供を産み育てることのできる社会の仕組みを作ること」である。この志を果たすため、国政を目指した経緯を思えば、感慨もひとしおであった。男女共同参画は少子化対策に資するものであり、国の最重要優先課題であるとの見解が、内閣府から出されている。人口減少対策には、女性に対する施策だけではなく、働き方や家族のあり方についても考えていくことが必要である。
■ 家事・育児・介護のとらえ方
「婦人は世界の人口の50%、公的労働の3分の1を占め、全労働時間の3分の2を占めているにもかかわらず、世界の所得の10分の1しか受け取っておらず、世界の生産の1%しか所有していない」。この言葉は、第2回世界女性会議採択文書でもある、国連女性の10年後半期プログラムの中の言葉である。
この原因は、家事労働のように賃金の払われないいわゆるアンペイド・ワークが、介護保険導入の際に介護が算定の基準に入った以外は、労働力として経済的に評価されていないためと考えられる。以下の例をあげる。自宅で献身的に寝たきりの親の介護をしても、それは収入にならず経済的な活動ではない。
しかし、親の介護は介護ヘルパーに任せ、福祉施設で介護の仕事をすれば、収入という経済的な評価と就業者という社会的地位が同時に得られる。この「介護」という言葉を「育児」に変えても、同様である。
料理や洗濯、掃除といった家事は、核家族化と都市化と家電製品の普及によって大幅に軽減されたが、生活の中で1日5時間ぐらいのウエートを占めており、日本では女性がその90%以上を担っている。
先進国、発展途上国を問わす、アンペイド・ワークを主に担っているのが女性である。アンペイド・ワークは戦前の家父長制の下では、性別役割分業に基づき、感謝とか家庭内での意思決定への影響力という形で、無形に評価されていた。
しかし、戦後の家父長制崩壊、核家族化、個人重視という家族形態の恋化によって、このような無形の評価すらされなくなっている。やや古い統計をもとにしているが、1996年に、費やされた時間×年代別・性別平均賃金時間により計算する機会費用法で、アンペイド・ワークについて試算したところ、116兆円になったという。これは国内総生産(GDP)の23%に相当する額である。現状では女性の平均賃金が安いため、貨幣評価額は少なく見積もられている側面があるので、算定によっては今後まだまだ増える可能性がある。男女共に働いたことが公正に評価されるためにも、子育てを支える政策を遂行するためにも各々の事例に個別的に対応するだけでは不十分であり、アンペイド・ワークの算定などを含めての総合的な取り組みが必要と考えている。
■ 新たな経済成長戦略のために
厳しい現実を若年女性が真剣に受け止め、結婚か仕事かという人生の厳しい選択を先延ばしにしてきたのが、晩婚化・未婚化・人口減少という結果につながっている。また、昨今の就業形態の変化に対応し「同一労働同一賃金」の原則に基づいて、非正規社員に対する社会保障を充実させていかねばならない。
二階俊博前経済産業大臣の下で、ヒト、カネ、モノ、ワザ、チエを大切に、地域の活性化と国際産業化をはかり、年率2.2%の経済成長を目指す新経済成長戦略大綱がまとめられた。このためにも、女性を「生かす」社会作りは重要である。
(自由民主 2006年11月14日付)